新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 |
ここは管理人「あんぱさんど」の妄想による、「名探偵コナン」BL(平*新)二次小説サイトです♪
06年に連載が終了した長編推理モノ「花珠」を中心に、短編、ヤオイ考などの独り言を保存しております。
ただ今小説は次作に向け休眠中ですが、時々つぶやきます(^^)
良かったらお味見を♪……「平×新」への愛と勢いだけは保証します(笑)
性質上、記事は古い順に並んでいます。最新の記事はカラム部の「最新の記事」か「カレンダー」からどうぞ。
*** 必ずお読みください ***
Blue Ampersandは「名探偵コナン」の、個人運営による小説ファンサイトです。
「ボーイズラブ」「ヤオイ」「平×新」の意味が解らない方は、速やかにご退室下さい。
一部、18歳未満の方の閲覧をご遠慮戴いています。記事冒頭の注意書きにご注意下さい。
戴いたコメントやメールは、記事のネタに使わせていただく事があります。管理人だけの胸の内に納めておいて!という方は、お書き添えいただくよう、お願いいたします。
当サイトに、野獣(笑)は登場しません。ツヤっぽい表現は、おおむね薄味です。ご承知置き下さい。m(_ _)m
このサイトは個人的なものであり、原作者、その他関係各社とは無関係です。当サイト内に登場するキャラクター及びストーリーは原作と一切関係ございません。サイト内の文章等の無断転載、複製等はしないで下さい。
また、小説はフィクションであり、登場する人物、団体、地名、方言等はすべて架空、事実に基づくものではありません。ご注意ください♪
はじめに | trackback(0) | comment(2) |
*** M E N U ***
タイトルをクリックすると、それぞれの初めに飛びます。
<小説>……「ヴァンプ・ヴァンプ」意外、全て同じ世界でつづく話として、書かれてます☆
書いた順。上が古いです。
「花珠」
〜身体が元に戻った工藤新一を待っていたのは、不可解な態度の服部平次、美しい真珠の海を臨む明治の屋敷、そして殺人だった〜……というコピー?で連載した、長編推理モノ、当方のメインディッシュです。平新が事件を解きながら、気持ちに気がついていくストーリィ。
「『花珠』目次」からどうぞ。
「プラム」
推理無し、短編。18禁♪でもヌルいです(笑)
「花珠」から3年後の番外編、平次視点です。
内容も推理も、「花珠」にネタバレしてます!本編を読んだ方のみご賞味を!
「ハッピィ・ホリディ」
同じく、推理無し、短編。
大学生になったばかりの平新が、やっと一緒に暮らせる事に……でも……?(笑)
新一視点。クリスマス用に書いたものです。
「チョコレート・カプリツィオ」
これも推理無し、短編です。
バレンタインのお話です。ちょっとコメディタッチ……?
視点が、平・新、切り替わりつつ進んで行きます♪
「 The 10th May 4 」
新一誕生日記念に書いたモノ。「花珠」、「プラム」に続いているお話です。
これも短編、推理無し。やっぱりヌルいけど、(笑)18禁♪
「 しんいちくんのせいふく」
「服部平次との3日間」放送日決定を記念して「制服」をテーマに書いたもの。短編、推理無し、ひねりもナシ(笑)。管理人が制服好きである情熱と勢いだけで書いたものf(^^;) 児童書風。
「彼の右手」
クドーの日記念。推理も変わった企画もしていない、シンプルな短編。なんてことない、夕飯時のにちじょ〜〜的な二人を、召し上がれ♪
「ハッピィ・ホリディ2」
これも、推理無し、短編。続・「ハッピィ・ホリディ」。
大人になって、探偵してる二人の、クリスマス。
特にこれといったオチはないんですが、イラスト付きっていうか、一部絵本っぽくなってます。
「ヴァンプ*ヴァンプ」
唯一、「花珠」と別世界。タイトル通り、ヴァンパイヤもの。この萌えにすっかり侵され理性を失い、別世界は書かないというポリシーを、簡単に犯してしまいました(笑)書き殴っただけの作品です。18禁。
「ハッピィ・ホリディ3」
シリーズ「ハッピィ・ホリディ」(笑)クリスマス話の三作目です。時系列では一番最初、平新二人の、初めてのクリスマス物語
。シリーズ第一作の、前の年のストーリーになります。ヌルいですがR18です。
<他>
まんが「Real evidence」
ちとせ純様のサイト「Pure Garden」の小説を原作に、描かせて頂いたもの。20P。それなりの表現がありますので、ご注意を!
(携帯版トップ/携帯版もくじ画像を展開できないときは、記事ごと、あるいはファイル名をクリックして読み込んで下さい)
「ヤオイ考」
友人と交わした、かなりディープな会話。こってりめなので、ご注意を!(><;)
「今日のおつまみ」
日々のぼやきなどを綴ったものです。当時の香りをお楽しみ下さい(笑)
「アニメコナンと私」
TV版コナンについて、管理人の想いを長々と、思い切り綴らせて戴いているもの。
(不定期連載中)このコンテンツは、別サイト「Blue Phenomenon」に分家しました。よかったらそちらでどうぞ。
「お宝部屋」
いただいたり強奪した(^-^)o、ステキなイラストです♪妄想の源泉!
「らくがき」
ほんとにらくがきです(笑)
サイト メニュー | trackback(0) | comment(0) |
誰が名付けたか、「ヤオイ」。
(「ヤマなし、オチなし、イミなし」です。念のためですが)
ず〜っと、アニメ・漫画は好きだったけれど、なぜかそれを敬遠してきた私。「平×新」は、その道に私を、見事にはめ込んでくれちゃったりしたのだった!(友人Tちゃんの計略
)
そのTちゃんとの熱い「平新」トーク(プププ)の中で「平新はええ!」という論議が白熱し、さらに「ヤオイとは何か」という論議までになり、「これだけ語れるものに対して意味無しとはどうよ」という気分になってきた。そしてついに、「ヤオイ」にしっかり「ヤマ」も「オチ」もつけてしまったら……という考えに至ったのだった。
その妄想は私の中でム〜〜〜〜ンと成長をとげ、それは少し前に旅した「伊勢〜志摩」での美しい風景と結びつき、推理・ヤオイ小説を書くという結果を生んだのだった……。
恥ずかしながら、大人になるまで、あまり本も(もちろんミステリも)読まないできた人間だったのに、いきなり「初の小説、初のミステリ、初のヤオイ」。……全く勢いだけの行為。大人のノボセって恐い。(笑)
そんな小説が私に教えたのは、「やおい」の面白さに「ヤマ」や「オチ」の有る無しはあんまり関係ないという、当たり前の事だった。それでもここに示す拙い文に何かを共有して下さる方がいたら、ほんとうにそれだけでいい!!救われます……。(こんな長いもん書いてしまった手前)
小説を書く間に交わしたTちゃんとの語り(シャウトの応酬)・「やおい考」もなかなか面白かったので、小説の間のおつまみに書いていくつもりです。「やおい」とは?などとまじめに学問する男の人なんか(そんな人いないか)に読んでいただいても、一つのデータくらいにはなるかも……?
小説にせよ、おつまみにせよ、感想、ご意見なぞ下されば、とっても励みになります!各記事下の「コメント」から、お気軽にどうぞ♪
最後に。
多大なる喜びをくれた「名探偵コナン」に、この小説を描く動機を与えてくれたTちゃんに、また励まし続けてくれた夫、啓発してくれた従兄弟にも、深い感謝とともにこれを捧げます。もちろん、これを読んでくださった(れようとしている)あなた様にも!!!
尚、この小説に登場する団体名、人物、地名などは、実在のものとは全く関係ありません。
小説の源となった素敵な本や場所との出会いについて、『「花珠」資料』カテゴリに記しています。良かったらご覧下さい。
はじめに | trackback(0) | comment(0) |
「花珠」
登場人物
酔波亭周辺図
酔波亭見取り図
序章 1
第1章
1.「到来」 1 2 3
2.「再会」 1 2 3 4
3.「予感」 1 2
第2章
1.「楼閣」 1 2 3 4 5
2.「肖像」 1 2 3 4 5 6 7
3.「暗夜」 1 2 3 4 5 6
4.「悪夢」 1 2 3 4 5 6 7 8
第3章
1.「訃音」 1 2 3 4 5
2.「波頭」 1 2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12
3.「濡髪」 1 2 3 4 5 6 7 8
4.「懐抱」 1 2 3 4 5
5.「隠者」 1 2 3 4 5 6
第4章
1.「火影」 1 2 3 4 5 6 7 8
2.「花珠」 1 2
終章 1
参考資料
読後、もし「トリックが解りにくかった」と思われたら、「「花珠」資料」カテゴリの中の、「トリック1、2」で、図解してます。良かったらどうぞ……。決して、読む前に見ないで下さいね♪
「花珠」目次 | trackback(0) | comment(0) |
穏やかな波の音に、辺りは満ちている。
波が耳をなでていくようだ、と男は思う。
それ以外は自分の漕ぐ櫂の軋み、櫂が立てる水音しか無い。
こんな時、やはり海は優しい、と思ってしまう自分に気がついて、男は頬を緩め、舟を進める。
たくし上げた着物の袖。そこから見える腕は引き締まり、良く日焼けしている。櫂を操るリズムは、よどみが無い。
人が二、三人乗れるだけの木製の小舟には、人の腕くらいの木箱が1つと、縄ひも、あとは舳先にランプが置いて有るきりだ。
ランプは舟が進むに連れ、順序よく周りの波を照らしてゆく。
その灯りがついに波でなく、艀をとらえた。艀は、大人1人がやっと通れるような、粗末なもの。男はそこに舟が一艘照らし出されるのを確認すると、自分の舟を惰性で寄せ、手早く櫂をあげる。舟を固定するとランプを手にし、木箱を脇に、ひょいと艀に飛び移る。
艀のすぐ先、海辺にそそり立つ崖の袂には、木造平屋の建物が数棟、張り付くように並んでいる。
岩の崖と波打ち際の間の土地は狭く、その敷地はその建物で占められて、他に何も見当たらない。背後と両脇に、崖が見えるだけだ。
建物の窓には一箇所だけ、染みだすような明かりが漏れている。
男は足早にその中へと急ぐ。
「やっぱり……」
入り口の戸を開けざま、男の目尻はかすかにほころぶ。
男が入った建物の内部はしきりが無く、暗く、奥に長い。男の灯に、何かの作業台、床に積まれたロープや籠の道具類が雑然と浮かび上がったが、一番奥の方には、別の灯りが灯っている。傍に、一人椅子に腰掛ける男。入ってきた男とは対照的に、華奢で色白、物静かな印象で、その姿は小さく見えた。その男は部屋に入って来た男の姿を見るなり、はじかれたように立ち、身体を深く、くの字に折り曲げた。
「今度のことは……どうお詫びしたらいいか……」
「二人の時はかしこまるなて、言うたやろ?」
入り口に立っていた方は少し怒った声で、頭を下げる男の側に、大股で近寄る。行き着くと、立ったままの男の両肩を押さえつけて座らせ、自分も側にあった別の椅子に、どかっと腰を下ろす。
「しようがないんさ、自然の恵みで商売しようとしとおんやし。おまえのせいやないやろお?」
「でも被害の額を考えると……私が赤潮にもっと用心していればこんな事には……。何年も大勢の人と資金をつぎ込んで、やっと結果が出る時になって台無しにするなんて……また一からやり直すとなると、相当な融資を受けなければいけないでしょう?ただでさえ資金不足なのに、そんなこと出来る訳……」
「だーいじょうぶやって!」
日焼けした男の方が、自責の言葉を連ねる男の頭を鷲掴みにし、くしゃくしゃとかき回した。
「……お前は銭の心配はせんで、研究だけに没頭してくれればええんや。何のために東京のお前の家族巻き込んでまで、ここに居てもろとるんや?諦めなければ、いつか必ず成功する。俺を信用せえ」
相手の方はその言葉に打たれたように静かになり、項垂れて、やっと小声で答えた。「……本当に、出来るんでしょうか?私に」
対した男の方は大げさに笑顔を作ってみせ、そして脇に抱えていた木箱を取り出した。
蓋を開け取り出したのは、細長い巻物のようなもの。彼はそれを握った腕を突き出し、相手の目の前に掲げる。
「今日はこれをお前に見せよう思うて、来たんや」
「これは……?」
うなだれていた男は目線を上げ、目を見開いたまま、考える。
巻物を持っている方は、相手の反応が期待通りという風に目を細め、目の前でその巻物をするするとほどいてゆく。
「きれいやろお?」
ほどかれていくその内側には、絵が現れた。緻密に描かれた、美しい花々。それは、桜の掛け軸だった。
「……これは……?」
掛け軸を持っている当の本人は、短く鼻息をつく。
「貧乏な商売人の家なのにな、たまたま先祖が持っとったもん、受け継いできたっちゅう掛け軸や。それより、どぉや?きれいやろお?お前の名の、『桜』や」
「……本当に見事な……きれいです」
その絵に食い入る目に、さっきまでの陰はない。
「良かった…やっと笑ろた……最後にお前に見せに来た甲斐があった……」
「最後に?」
彼はやっと明るくなった顔の、その眉根を寄せる。
「これを売って、資金の足しにしよ思うとんや!」
答える方は、晴れ晴れと言う。
「そんな……!いけません!そんな……」
彼の言葉は尻切れトンボになり、下を向いてしまう。
しかしそんな言葉とは裏腹に、答える方にはよどみが無い。
「俺はな、ずっと何かやったろう思とったけど、この夢と出会た時、これや!て思たんや。でもなかなか上手い事出来んとおったから、お前が協力するて言うてくれた時は、天に感謝したんやで?……夢が実現出来るかどうかは、やってみんと判らん。そやからこそ俺はやり続けたい。追う夢が有る事自体、嬉しいんや。掛軸一本で研究が続けられるんなら、安いもんやないか……それとも……」
彼の表情が、初めて深刻になる。
「……お前は、もう、嫌か?」
相手は俯きつつも、思い切り首を横に振る。
「いいえ……いいえ!」
最後の方は、声が波打つ。
問いかけた方は、大いに満足した様子で日焼けした顔を破顔させると、一人立ち上がって、窓の側に行った。
「……ところでおまえ、稚貝を見とったんか?」
彼はほころびすぎた自分の顔が、恥ずかしかったのかもしれない。窓の外を見て、相手に背を向けたままだった。
「はい……なんだか見たくなって……研究に迷うとよく来るんです」
「……そうか」
男はそう答えると次の言葉を発さず、外を見たまま、じっと立っていた。
窓辺の男は海を、その背後に腰掛けている男は、窓辺の男を見た。
こんな事は、2人の間によく有る事のようだった。
穏やかに打ち寄せる波の音が、室内を通り過ぎる。
「……わしらが出会って、何年になるんかなぁ?」
先に口を開いたのは、窓辺の男の方だ。
「初めて会ったのは、21年の産業博覧会のときでしたから……5年、ですね」
「そうか……あの時はまだ二十五やったか……もう随分長いことつき合わせとるんやなぁ」
相手には背中を向けたまま、男は独り言のように呟く。
「つき合わせてる、なんてそんな……あなたがうちの研究室に来た時は、感動しましたよ?世の中に、こんな大きな事を考えている人がいるのだ、と」
「それがきっかけで、帝大の研究者やったおまえが、俺のとこで働く事になってしもたんやからなあ……わしこそお前や、お前の家族、色んな人の人生を変えてしもたんやから、絶対に成功せんとあかん。お前が謝ることなんか、なんにもない。なんかあっても、もう謝らんでええからな。気にせず研究してな」
「はい」
窓辺の男は仁王立ちになって、まだ窓の外を向いたままだった。
「なぁ、ホンマにきれいやと思わんか?夜の英虞……」
その声は、独り言のようだった。きれい、といっても月の無い夜で、海は暗く、よく見えない。在るのは英虞湾の波の音と、潮の匂いくらいか。
相手が答えようと口を開きかけた時、窓の男は急に振り返った。口の両端を目一杯横に引っぱり、目を見開いている。これは何か楽しい事を考えついた時の、彼のいつもの表情だ。
「な、研究が成功して儲かったら、この崖の上に屋敷、建てようか!」
「こ……こんな断崖絶壁のところに……ですか?」
男は窓の方からやって来て、嬉々とした目を相手に近づけ、迫る。
「そうなったら銭はなんぼでもあるやろうから、屋敷の一軒や二軒、どこにでも建つわ。ここは初めて養殖始めたとこやし、この上から、ああ、あん時あんな赤潮有ったなあ、ゆうてこの海を見下ろすんや……どや、気持ちエエと思わんか?この上なら、英虞湾が見渡せて人を招待したら喜ばれるし、この養殖場に近うて便利やし……うーん、我ながらええ考えやな!な?」
一方的に話されたあげく、ポン、と返事を求められ、相手は鳩が豆鉄砲を食らった様になっている。そうして目の前に突き出された見開く両目をじっと見ていたが、数秒後、吹き出した。
「なんで笑うんや!本気やで!」
「すみません」
華奢な彼は口を押さえて俯いていたが、肩が揺れている。明らかに笑っている。その笑いを押さえる為か、隠す為か、答えを待つ男を置いて、彼は一人窓のそばに歩み寄った。そうして自分を整えるように暫く海を向いてから、振り返って男を見た。
その表情には、もう一点の曇りもない。
「城でも御殿でも、好きな所に好きなだけお建て下さい。研究は、私が必ず成功させますから」
向けられた笑顔に、相手の男は息が止まる。
その清爽さ。
全く彼の名にふさわしい、と思った。
そして自分も、満面の笑みを返す。
「解った……この崖の上に、俺らのやって来た事、証にする御殿、建てたる……約束や……!」
******************************
間違って載せてるんじゃないんです!ちゃんと「平新」出てきますから!!(笑)
気を辛抱強く持って、第1章−1 到来 〜1/3〜 へどうぞ……♪
*******************************
「花珠」 | trackback(0) | comment(0) |
窓から、何かの花の匂い。
頬の風は冷たいが、日の当たる場所は充分暖かだ。今日は快晴。
昭和初期に建てられた洋館の2階は、見晴らしが良い。外気で肺を膨らませて遠くを見ると、枝先がぼんやりと赤みを帯びた大木が見える。寒い間はただの枯れ木みたいだったのに、いつの間にか蕾がついたらしい。
毎年こう思う度、あれは桜だったな、と意識する。
工藤新一は、今それを見ているのは、自分の身体、自分の部屋なのだと、実感する。
よく桜に間に合ったものだ、とも。
黒の組織を一掃したのは、年が明けてすぐの頃だった。
国際的な闇の組織の壊滅は、政治、経済、医・科学、広範囲に渡った新たな問題の発露になり、警察だけでなく、国も巻き込む歴史的事件となった。その結果、その後の事情聴取や現場検証は膨大な作業となり、この暴露劇の発端になった立場上、怒濤のような仕事に追われる事になった…………自分の身体に戻る作業と平行して。
組織が開発した薬「APTX4869」。
全ては、あの薬から始まったのだ。だから小学一年生の「コナン」が高校生の「工藤新一」に戻らなければ、自分にとってのあの事件は、終わったとは言えなかった。
黒の組織が表沙汰になった事で、薬の存在も世に知られた訳で、「コナン」の身体は、医学的にも重要な被験体となってしまった。ただちに薬の研究チームが結成され(この国家プロジェクトの中心人物はもちろん、開発者で、自らも薬によって小さくなってしまった灰原哀だ)、高校生なのに7歳児の姿という世にも稀な身体は、隅から隅までデータ録りされた。……お陰で身体を戻す治療薬は驚異的に早く出来上がり、今ここに、こうしていることが出来るのだが。
しかし身体が元に戻ったからと言って、以前の日常が始まった訳ではない。3週間ほどは入院を強いられ、内科、外科、精神科……運動を含む様々な身体能力の検査、データ録り、リハビリ漬け。そして何より、進級問題が目の前に迫っていた。
進級するのにはもちろん、出席日数が足りない。身体が戻るとすぐに両親に学校にかけあってもらい、特別の計らい、ということで、なんとか進級出来ることにしてもらったのだ。もちろん、厳しい条件付きの事だったが。
それは進級までの2ヶ月足らずの間に、休んでいた間のレポートとテストを、全てクリアする、というものだった。蘭や友達に病院に来てもらい、談話室でテストのヤマを聞き、夜のベッドでは看護士に見つからないように、参考書を開いた。3月初旬に退院し復学してからは、通院、授業、放課後の補習、テスト、レポートと、コナンののんびり生活のしわ寄せを、一気に食らったような日々になった。
春休みも間近になった今日は日曜日で、珍しく、病院にも学校にも行かなくて良い。仕上げなければならないレポートは有るものの、工藤新一になってから初めて、自宅で一日過ごせる日だ。
考えてみれば、自分の身体をゆっくり噛みしめるのも、今日が初めてかもしれない。
コナンだった頃、何度も夢見たこと。
完璧な自分。
気分は、最高のはず。
新一は勉強机に顎肘をついて、外の桜を見る。
参考書で隙間の少ない机上には、プリントが一枚。顎肘をついたのと反対の手は、その紙の隅っこを弄んでいた。
目線の先の淡く赤い枝に重なるのは、蘭の泣いた顔。
信号待ち、シャワーを浴びる間……その度に打ち消して来たけれど、こんな風に時間があると、誤摩化せない。モヤモヤと考え事をする自分を。
蘭は泣いた。
新一が組織に乗り込む時、「コナン」の正体を聞いて。「コナン」の身体が、「工藤新一」に戻ったのを見て。
新一が「コナン」の正体を蘭に明かしたのは、組織に乗り込む以上、帰って来れない可能性があったからだ。彼女に嘘をついたままで逝くのなら、と考えると、蘭のあらゆる罵声や軽蔑など何でも無い事であり、新一はそれを充分覚悟し、告白したのだ。
しかし、蘭は責めるどころか、泣いた。
あなたがそんな辛い状況だったのに、解ってあげられなくてごめん、彼女はそう言ったのだ。そして、言いたい事が沢山有るから必ず生きて帰って、と最後には笑ってさえいた。
そして身体が戻った病室で。
身体が元の姿に戻って、ストレッチャに載って病室に戻って来た時、彼女は腕に取りすがってきた。こうして思い出す度、彼女の涙が染みた袖の温度、声を殺す背中の震え、そんな感覚が蘇る。
あれは、我慢強い彼女に、自分が溜め込んだものだ。彼女のダムが決壊するくらい、圧力をかけたのは自分だ。あの時はその髪を撫でてやるくらいしか、出来なかった。
だから二人きりになれた時、長い間言えなかった言葉を、ようやく言った。
自分の身体で、自分の声で。
そして、口づけして、
抱きしめた。
新一は目線を、桜の枝から手元の紙に戻す。
進学希望調査票。
今からここに記入しようとしている学校名は、自分と蘭を、また離ればなれにする。4年、もしかしたらそれ以上。あれだけ待たせた彼女にさらに待ってくれと頼むのは、もう殆どプロポーズだ。だからこの進学を打ち明ける時、彼女に好きだと告げようと、心に準備してきた。コナンになる以前から。
だが彼女に好きだと言った自分は、何故か進学の事は言い出せなかった。そしてこの一ヶ月、蘭と二人きりになる事を、避けてさえ居る。
どのみち、春休み明けにこの用紙の提出すれば、この事は彼女の耳にも入る。自分以外の人間から彼女に知られる事だけは、絶対に避けたい。今からでも彼女の家に行って、言えば良いのに。さっきから何度もそう頭の中で思うのに、まだ咲きもしない桜を見たりしている。
こんなことは、コナンになる前は無かった。
せっかく身体が戻ったのに、まだ、彼女に隠し事をしている。
何故なのか、自分でも解らない。
自分に、違和感。コナンになる以前の自分は、こんなだっただろうか?
この違和感は何か。
何処かで感じた事の有るような感覚……。
自分の事なのに、解らない。
今はもう、本当の身体なのに。全てが、本当になったはずなのに。
判っているのは、コナンから元の身体に戻った自分の中に、「違和感」が「確かにある」ことだけだ。
短い電子音。
急な音に、皮膚までが反応する。
新一は慌ててポケットから携帯電話を出し、開く。音はメールの受信音。受信したフォルダを見て、息をつく。
メールは学校の先生から、試験結果を知らせるものだった。これで、一科目クリア。
短く返事を書いて、送信。携帯電話を畳む。
畳んだ動作のまま、暫く止まる。
そんな自分に小さく舌打ちして、乱暴に携帯電話を置いた。
でもまた、そこから手が離せない。
携帯が鳴る度、こんな反応。
こんな事も、「新一」に戻ってからの事。
かかってこない電話に、これだけ反応する自分は。
「新ちゃあーん」
階下から、平和そのものの母親の声。
「下りてらっしゃーい」
再度、母の声。機嫌が良さそうだ。何故か、救われた気がする。
新一は携帯電話を胸ポケットに、プリント用紙を机の引き出しに押し込むと、勢いをつけて立ち上がった。
到来〜2/3〜 へ
「花珠」 | trackback(0) | comment(0) |
















